今回は「ワイヤーロープのこと」。
前回に続いて縄の紹介。今回は、一番右の通称「ワイヤーロープ」だ。この縄をあまり知らない人や、買おうかどうか迷っている人向けに書くので、おなじみの人は今回はのんびり読んでください。
これもJRSFのサイトを通じて購入できる。そちらの説明にもあるように、3重跳びなどの多回旋や、30秒で何回跳べるかなどのスピード種目向けの縄だ。2,000円もするので、縄の値段としてはかなり破格なほうだろう。でも、使う場面が限られているとはいえ、なわとび界の多くの人がこれを使っている。スピードが断然違うからだ。
それを可能にしているのが、縄の材質。縄の芯には極細のワイヤーが数本束ねられていて、プラスチックでコーティングしてある。そのため、細いのに芯がしっかりして、重みまである。さらに徹底しているのが、グリップの作り。
こんなふうに回る。「グリップの芯が縄に連動して回る」という特殊な作り。とにかく、同一方向へ勢いよく回るように作られているのだ。実際回してみたら、まるで別物に感じると思う。
ただ、購入前の人には注意しておくことがある。というか、本当に書きたかったのはここからだ。買ってわかった注意点。
写真を見てわかるように、この縄、とてもグリップが小さい(ショートグリップと言うらしい)。計ったら、水色の部分が108mmだった。10cmちょっとである。
そして、説明書はない。小型の六角レンチが1本ついてくるだけだ。
この六角レンチ、たぶん長さ調節のためなのだが、ここで声を大にして言いたい。
安物でワイヤーを切るな!
切っちゃだめだ。これで僕はハサミとニッパーの刃が欠けた。
縄の端のほうを留めている小さな金具をレンチで緩めると、初期状態より短くできる。縄が余るので、そこは思い切って切ってしまいたい。でも、ワイヤーの堅さは半端じゃない。理科で使う導線を切る感覚とはわけが違う。結局僕は、わずかについた傷を頼りに、ねじったら切れたのだが、工具を犠牲にした……。もっと強度のある刃で切るとか、芯を1本ずつばらして切るとかしないとだめなのかもしれない。
あと、この縄は当たると危険なので注意したい。
3重跳びなど、思いきり回す機会の多いこの縄は、当たると、服の上からでもみみずばれになる。跳びきれずにちょうど着地で縄を踏んだときなど、勢いそのままに縄が脚に当たる。ほとんど鞭で打たれるのに近い。
当たるのが自分なら練習の傷跡で済むが、近くに人がいたら跳ぶのはやめるべきだ。
縄自体の事故もある。たまたまかもしれないが、2本目に買ったワイヤーロープは、固定金具(上で書いたのと逆端の、始めから固定された金具)が弱かったのか、買って2週間くらいで跳んでいる最中に金具がはずれ、縄がグリップから抜けて飛んでしまった。周囲に人がいなかったから良かったが、これはちょっと怖い。あれ以来、少なくとも、縄の長さより近くに人がいるときは、ワイヤーロープで跳ばないことにしている。広場とはいえ、公園で跳ぶことが多いので。
それもあって、学校ではこれを使っていない。子どもが借りたがるだろうし……。使うなら、1人ずつ、離れた場所で跳べる環境が整うときだろう。放課に、限られたスペースで一緒に跳んでいる状態なので、まだ安易には見せられない。
ちなみに、金具が抜けたワイヤーロープは、知っているスポーツ屋さんに相談したら、ペンチを使って端を縛って固く留めてくれた。今のところ緩む感じはしない。
注意を多く書いてしまったけれど、それ以上に僕は、この縄で3重跳びを楽しんでいる。最近、ようやく4重跳びも1回だけ成功した。この縄でなければ、「できるかもしれない」とは思わなかっただろう。
縄の力を借りることに抵抗のある人もいるかもしれない。その気持ちは否定しない。ただ、ワイヤーロープは、「もう1回転」の感覚を身につけるのに役立つ。こちらで慣れて、ビニールロープに戻ると、たしかにワイヤーロープほど速くは回せない。それでも、別の縄で跳べていると、「このタイミングなら跳べる」という確信を持てる。そこが一度も跳べていない状態と大きく違う。
ワイヤーロープは、「とっておき」でもあるし、「ヒント」でもある、そんな縄なのだ。