今回は「なわとび台のこと」。
なわとび台、というと、「より高く跳ぶためのもの」というイメージがあるだろう。ぱっと見でそれとわかる。でも、台で跳ぶ子どもを何度も見ているうちに、なわとび台にはもう1つの効果があることに気づいた。
それは「バランス」。
なわとびはまっすぐ跳んでいるように見えて、結構体は揺れている。跳ぶだけでなく、縄を回す力も空中で加わり、おそらくその人の「クセ」である方向へ体が傾き、着地がずれていく。人間、前後左右に均等に力を配分するなんてできないのだ。
上手な子はそのへんを修正して、着地する位置がそんなにブレない。ここでいう「修正」というのは、たとえばジャンプが後ろ寄りになったら、次の跳躍で前に出るように跳ぶという調整のことだ。これを、跳んでいる短い瞬間で判断しているので、同じような位置で跳び続けられる。
まだ跳び方がぎこちない子は、本当にわかりやすくバランスを失う。特になわとび台は、動きが大きくなる分、動きのブレも大きくなる。たとえば、2重跳びをなんとか跳んでいるけれど、着地がどんどんずれて、3回も跳んだら台の外へ飛び出してしまう、とか……。
だが、バランスとりは、いざやってみると難しい。
僕も3重跳びが2~3回しか跳べなかったころ、やたら体勢を崩すので、地面に枠を引いてその中で跳ぼうとした。ところが、やっと跳べる程度の腕前で、それは無謀だった。跳ぶこと、回すことに必死で、着地地点なんて気にする余裕がない。逆に着地を重視すると、今度は3重跳び自体が跳べなくなる。
バランスというのは、タイミングもリズムも合っているから、きれいに保てるのだ。
おそらく、最初はバランスを考えず、すこしでもタイミングやリズムをつかむことに専念したほうがいい。そして、ある程度形になってきたら、バランスを保ちながら跳ぶことを考える。逆は……、どうなのかな、バランスを意識すればタイミングをつかめるのだろうか? 僕としては、あまりぴんとこない。
順番はともかく、なわとび台は、動きが大きい分、バランス感覚の練習にもなるはずだ。
なわとび台にチョークで円を描いたら、バランスも意識しやすくなるのかな、と思った。
今の小学校に来て、初めて運動場を見たとき、目を疑ったのを覚えている。職員室のちょうど外、運動場の隅に、いくつも並んだなわとび台! 合板に角材を釘で打って作っただけのものだったが、5つも6つも置かれていた。だから異動先がこの小学校だったんだと、半分信じかけた(笑)。
今年は、3学期の終わりに、なわとび台は片づけられてしまった。また冬に子どもがそこで跳ねるとき、バランスのことも教えてあげたい。