今回は「イメージのこと」。
新しい技を覚えるときや、自分のフォームを改良するときなど、実際に跳ぶ前に欠かせないものがある。イメージだ。多くの人は、理想を頭の中で再現しているのではないだろうか。
僕も数えきれないほどイメージを浮かべてきた。考えてみると、だいたいイメージは3つの段階に分かれている。
創る → 固める → 追う
この3つのステップをなわとびに当てはめると、こんな感じだと思う。
「創る」:見本や理想から、自分で跳ぶときのイメージを浮かべる。
「固める」:浮かべたイメージを、跳ぶ前にもう一度浮かべて確認する。
「追う」:再現する。つまりイメージのようにできるか跳んでみる。
普通に考えれば当たり前に思えるだろうか。
でも、この中で1つだけ、結果を大きく左右するステップがある。「固める」だ。上で「確認する」と書いたのが重要な部分。ここでイメージにあやふやな部分があると思うように跳べない。
基本的にイメージどおりに跳ぼうというのは挑戦で、うまくいくとは限らない。失敗するとわかっていて失敗するようなものだ。ただ、失敗したときに、「イメージと実際の比較」ができるかどうかは、イメージに左右される。イメージがあやふやでは、比較もできないからだ。
だから「固める」ステップが大切になる。ここを飛ばして、とりあえずのイメージを「創って」「追う」だけだとあやふやになるというわけだ。
とても大ざっぱなことを言っているけれど、僕にとっては、練習の中でイメージを固めるステップは何度も成功につながってきた。
わかりやすいのは、2重跳びや3重跳びだろう。全体のイメージを浮かべるとき、より細かく浮かべると、頭の中で縄の回る音が聞こえてくるはずだ。頭の中で音を再現することもイメージ。音をイメージできるところまでくると、なんだか跳べる気になってこないだろうか?
実際、この手の技は、音がタイミングの決め手だ。イメージした音に合わせることで、タイミングをつかむことができる。跳んでみて、明らかにタイミングが不自然なら、イメージ自体に問題がある。そのときはイメージを「創る」ステップ、あるいは本当に「固める」ことができていたかを考え直せばいい。
技を連続する間でも同じことが言える。慣れれば、ほんの短い間でも、イメージを頭によぎらせることができる。「ここだけは気持ちジャンプを高めに」といった確認でもいい。
大技の前に、あえて縄の速度を緩めたり、前跳びやサイドスイングをはさんだりすることがある。あれは体勢を整えるためだが、同時に、イメージを固める時間も作れている。
あせらず、イメージを「固める」こと。
これはなわとびに限った話ではない。絵を描くときもそうで、イメージが固まっていなければ、何度も描き直すことになる。いわゆる「出力」「アウトプット」を伴う行動全般に言えることだろう。なわとびでもその考えをいかせる、ということだ。
勢いでうまくいっても喜ぶのは早い。それはたまたま、イメージが1回で固まった場面だった、というだけだ。幸運を喜ぶのは短めにして、繰り返しイメージを再現できるか確かめてみよう。
安定して3つのステップを踏めるのを実感できたとき、本当の喜びがわきあがるはずだ。