今回は「8の字のこと」。
ちょっと前、愛知県の組体操事故の調査結果が発表されました。
組み体操で396人が重傷 愛知の小中校、13年以降 - 産経ニュース
その後、2メートル制限をかける(?)とか、対策を打つ話も上がってきましたが、とりあずはこの数字。こんなに起こってたんですね……。
これまで勤務した学校は、小中どこも組体操がありました。この調査にカウントされた事故があったかどうかは、ほとんど覚えていません。学校で働いているといっても、自分は事務で、練習に関わったことがないせいもあるでしょう。
職員室に話が届くくらいの事故があれば、記憶に残っていると思います。それなら、少なくとも自分のいた学校では事故がなかったのかな……という程度ですね。
でも、だからといって、組体操問題がなかったとは言えません。
組体操問題ってなんでしょう。
「大人の都合で子どもにむちゃをさせてしまうこと」でしょうか。
大阪で10段ピラミッド事故があったとき、「この学校何考えてんだ」的な会話が職員室で飛びかいました。ニュースで流れたような、ぐらぐら揺れるピラミッドは、同業者でも納得できないものだったようです。
とはいえ、「やめられない事情でもあったんだろうね」という同情論がすぐ出るあたりはやっぱり職員室の会話というか……。少なくとも、組体操自体が否定されている感じではありませんでした。
たぶん、多くの学校がこんな会話だったでしょう。
あそこよりは安全にやってるから、組体操はやっても大丈夫だし、やるだけの意味がある――というのが、学校では(表向きでは?)多数派、だと思います。
ネットでの反応を見ると、どれだけ安全に配慮しても、事故るときは事故るのが組体操なのに、なんで意地でもやるの? 達成感なら他にやれることあるじゃん。みたいな反対論が多かったですね。
ピラミッドやタワーなら、何段でも落ちるときは落ちるし、先生も100%補助できるわけではない、だから、事故らない組体操なんてない。
わかります。「むちゃ」の基準は人それぞれで、事故がイヤだと思えば、組体操はどうあっても「大人の都合」なのです。これだけ骨折などの事例が集まれば、なおさらでしょう。
最近、8の字にも、近いものがあると思いました。
熱意の部分ですね。以前、098 8の外からで書きました。大半は担任の先生の熱意によります。子どもからガンガン練習したいという熱意がわいても、それを認めるかどうかは担任の先生しだいです。やっぱり、担任の先生が基準です。
そうしてできあがる8の字は、まず猛スピード。そうでないと勝てないからです。
これも、「大人の都合による子どもへのむちゃ」だなあと思います。
8の字が好きな人は、むちゃとか言われると気分悪いなあ……と思うかもしれませんね。すみません。組体操と比べて書くためなので、むちゃという言葉で先へ進めさせてください。
組体操と違うのは、そこまで大きな事故につながりにくい点でしょう。足をすくわれて危険な転び方をするか、タイミングを間違えて縄が顔に当たるかくらいです(起こったら起こったで問題ですけど)。事故になりにくいぶん、高い目標にも挑戦しやすいのです。
ただ、その陰で、いやいや跳んでいる子にとっては、むちゃの押しつけです。
失敗すれば自分の責任。跳べるならまだいいです。みんなのペースでは跳べなくて、自分のときだけペースが落ちる。どれだけ先生やみんながフォローしてくれても、苦しさはあります。
だから組体操みたいに、安全なところまでレベルを下げろ、いっそのことそれ自体やめろ、という意見を、8の字にも持ち込めと言っているわけではありません。
外から見て明らかにおかしいのと、一部の苦手な子が苦しいのとでは、話が違います。それを同じにしたら、徒競走も合唱コンクールも全部ケチがついて、雰囲気が悪くなるだけです。苦手なことでもやらなきゃいけないときもありますからね。
乗り越えられないむちゃと、乗り越えられるむちゃの違い、でしょうか。
ただ、乗り越えられるむちゃに見えても、一部の子は苦しい。ましてや、「クラスの勝利」のために練習に熱を入れられすぎては、たまったものじゃありません。僕自身が人の回す縄に合わせるのが苦手で、同じような劣等感があるので、そのへんが気になるのかもしれません。
結局はただの観察で、フォローなんて当然先生たちは考えている話です。
それでも、苦手な子の気持ちや、098で書いた行きすぎな熱意あたりは、8の字で気をかけたい部分ですね。
シーズンが近づいた8の字に、組体操事故で浮かび上がった影が重なったように思えたのでした。
このシーズンも、体への事故、心への事故になりませんように……。
8の字の画像で、わりとアップで楽しそうだったものから1枚、でした。
この子、たぶんねらってやってます(笑)。