今回は「不安と安心のこと」。
前回、抽象思考の話を書きました。
「なわとびも同じだ」をつけてみようって、要するにこじつけなんですが、今回の話はちょうどそんな発想から思いついた話です。
イラストの参考で本を読んでいて、アルヴァ・アールトという建築家の造ったアトリエに、壁がカーブして切れ目が見えない場所があると書いてありました。
この部屋の、つきあたりの壁は、カーブしていた。「行き止まり」になるのを避けるかように、横にカーブしていく。まわり込まないと、その角が見えない。この家には「終わり」がない。建築という閉じた空間が、「無限」のスペースに挑戦しているようだった。
――布施英利『遠近法(パース)がわかれば絵画がわかる』(光文社)
(元は同著者『はじまりはダ・ヴィンチから』(エクスナレッジ))
読んでいて、すこしだけ不安を感じる一文でした。終わりのなさ。無限。そのイメージが、なわとびのあるフリースタイルを思い出させました。
第9回全日本ロープスキッピング選手権大会の、三村大輔さんの演技です。
この中で、4重跳び系を10連続くらい続けている部分があります。
初めてこれを見たとき、鳥肌が立ちました。
こんなのどこまで続けられるんだろうという不安が最初だったと思います。
どこかでひっかかるんじゃないかという怖さ。でも、次々と跳び続けていく三村さんの姿。どれくらい練習してここまで行きついたんだろう、という驚きがわいてきて、あの1回1回のすきまから、重ねてきた努力とか、なわとびへの情熱が見えるような気がして、音楽の切なさも手伝って目頭が熱くなりました。
今でも、あのシーンは、すごいの一言では終えられません。
その最初には、やっぱり、終わりの見えない不安がありました。どこまで跳び続けられるのか。そんな不安は、三村さんが跳びきったときに安心に変わりました。
この、不安が安心に変わるインパクトは、狙っていなくても生まれる演出にも見えます。
三村さんが世界大会で見せた5回連続宙返りとか、アメリカ選手がよくやる複雑なラップとか、似たものを感じるシーンがときどきあります。どこまで続くのかわからない、無事に終わりが来るのかわからない、そういう不安から跳び終えたときの安心につながるシーンです。
自分がジャッジなら、その印象だけでオリジナリティに1ポイントつけたいです(笑)。
僕の場合、ミスせずに続けることが難しいですが、挑戦はしています。
ある子が曲に合わせてレベル3~4を8連続で跳んでいる動画があって、「○○くんの8連」なんて、仲間内で呼んでます。それを自分が跳びやすいように、小休止を入れながら、こんなのを練習で跳んでいます。
SCC、SOO、SCO、SOC、SEBO、SCC、SOO、TJ、EBTJ、SC、SOCL、SC、SOAS
重複もあって、「○連」とは呼べないかもしれませんが、跳びきったときは気持ちいいです。さすがに演技に入れたら体力が持ちそうもないですけど(笑)。
よくやってるウィンドミルスピンも、初見なら、どういう形で収まるのかわからなくて、不安から安心へつなげられる技と言えそうですね。過去に人前でやってみたときは、それなりに反応も良かったです。
競技ルールの「3回旋以上を4連続」を超えるような連続技や、変わった動きの組み合わせ。そうしたルーティンを完結させて、満足感やいい反応を得られるのも、単縄の魅力だと思います。
「完成の歓声」とでも言えるような瞬間を味わってみたいですね(笑)。