■ なわとびはときに暴力かもしれない
今回は「暴力のこと」。
すこし前、初めて回る縄が怖いと思いました。
1月ごろだったと思います。SEBOCとか、TJOとか挑戦していたとき。縄は通るようになりつつありましたが、何度か回しているうちに、ふと「怖い」と感じました。
音の強さに自分が引いているのがわかりました。
縄の立てる音なんて、ずっと聞き続けてきた音です。特にこの数か月、いわゆる4重系は毎回練習していたはずです。それが、「自分はどんな音を立てているのか」と意識したとき、初めて怖いと思いました。
――音がやべえ。
4、5年前、公園で練習していたとき、中学生くらいの子たちから聞こえた言葉です。
よく男の子たちがバスケをしてるんですが、広場の片隅でなわとびを始めてから、当然その子たちから視線を感じていました。
あるとき聞こえたその言葉に、当時の僕は小さく自己満足していました。人に見せたがっていたからです。言葉が聞こえてくるだけで、一種の褒め言葉でした。
でも、「やべえ」という言葉には、「やりすぎ」というニュアンスもあります。
なわとびが好きな人なら爽快に聞こえる、多回旋のビュンビュン回る音も、なわとびに興味のない人には「やりすぎ」な音でしかありません。いわば、音の暴力です。
そんな感覚を、回している側の自分が感じてしまいました。「音の強さが怖い=暴力と思った」ということです。
考えてみれば、なわとびに関わるトラブルは、暴力性が背景にありますね。
たとえば施設問題。
フロアにキズがつく。音がうるさい。
暴力の定義が過剰な力だとすれば、勢いのついた縄の起こす打撃や音は、なわとびに理解・共感がないかぎり、暴力として受け止められているのです。
これは、単縄の歴史が浅くて、施設が対応経験を持っていなかったり、そもそもそういうスポーツまで想定した設計がされていなかったりで、仕方のないことかもしれません。
キズといえば、縄が当たる痛みもまた暴力です。
後ろはやぶさが顔にあたる。TJで背中を打つ。後ろSASOで手を切る。このへんは全部やりました。2重とび1つにしても、足に当たると痛いからやだ、とこぼす子どもは何人も見てきました。
逆に、2重とびができない子は、無意識のうちに音や勢いを恐れている面もあるんじゃないかと思っています。
強く回す感覚がつかめないだけなら技術や自信をサポートすれば何とかなります。でも、そもそも暴力のイメージがその子を知らず縛っているなら、別の視点から寄り添ってあげないと、どうにもならないのかもしれません。
暴力は何で防げるでしょうか?
単縄が好きな人は、ケガや体への負担といった暴力を、うまく回避できるように技術をみがきます。
暴力なんて、基本、受けたくもないし、与えたくもありません。最初に書いた、自分で回す音が怖いと思った話も、達成感でプラスに転じさせたり、強引に回さなくても跳べるようになれば、また変わってきます。
どこかに暴力っぽさが感じられるときに、うまく避けられる手だてがあるといいんですが……。
締めのイラストは、軽く。