今回は「説明のこと」。
以前、出張先の小学校の近くの庭先で「車」を見ました。
車といっても、本物ではありません。30cmくらいの、デフォルメがきいたおもちゃの車が数台、並んでいました。おもちゃとはいえ、凹凸(おうとつ)やパーツは丁寧に見えるなあと思いながら通りすぎ、そのうち、
単純だからわかりやすい。詳しくないとわからない……。
童話でだれかが口にしているような言葉が浮かんでは消えました。
「デフォルメ」という言葉から始まった連想でした。
- デフォルメ … シンプルにまとめたポイント
- ディテール … 詳しく追究されたメカニズム
なわとびの技術や説明に2つの言葉を当てると、こんな感じでしょうか。
細かく説明すれば、縄の物理運動から体の各部位まで、どこまでも言葉にできるのが技術です。その要点をしぼって、「ここを!」という技術を伝える。これがデフォルメされた技術でしょう。
一方で、それだけじゃ理解しきれない人もいます。
自分の経験だと、シンプルで理解しきれないというより、もっと基礎的な部分で技術が追いついていないことが多いです。交差やあやとびで「おへその前でバッテン」したくても、縄をまだ腕全体でしか回せないので腕を交差する余裕すらないとか……。そうなると、すこし前の段階から身につけないと、交差の説明になりません。
前段階まで広げることを詳しい説明と言うのは苦しいかもしれませんが、交差を細かく見ていけば、そこまでの流れもまた「ディテール」と言えるのかな、というのが僕の印象です。
デフォルメもディテールも、元は1つのものを見ています。
遠くからざっくり見ているか、近づいて(ときにはレンズを通して)細かく見ているかの違い。ワンフレーズで届けば理想的でしょうけど、僕自身がシンプルなコツではつかみきれないこともあって、もうすこし細かく ―― と考えて、ブログでもずっと細かいことを書いています。
物体としての細部を言うなら、人間の体のどこをとっても同じような細やかさがあるはずであり、人皮で包まれている以上、顔だけが特別に細工が入り組んでいるわけではない。
―― 円城塔「文字渦」(『文字渦』所収)(新潮社)
上の「車」を見たころに読んだせいか記憶に残った一文です。ディテールにこだわっている感はありますが、細かさの大切さに共感した覚えがあります。
コツやポイントを聞いて「わかった!」という人は、跳ぶときに感覚がメカニズムをなぞっています。言葉にしていなくても、体がディテールをわかっている感じでしょうか。それがままならない人に、届く細やかさを書ければなあと思っています。その先に、自分でもようやく、デフォルメされたコツってこういうことかとわかる日が来れば……。
今回はディテール寄りの話でした。
ただ、情報量が多すぎれば混乱することだってあります。次回は、デフォルメ寄りの話で。
なお、今回も次回も、イラストはネタ寄りです。