とびまるの「なわとびのこと」

なわとびのことを書いたり描いたりするブログ。

607 はためく翼にあこがれて

今回は「かっこよさのこと」。

単縄のかっこよさってなんだろう?

単縄を始めてしばらくしたころ、そんなことを考えました。やっぱりきれいに技が決まるとかっこいいなあ …… なんて上手な人を見ては思ってました。人に見せる世界からは離れて長いですが、ときおり考えることがあります。実は、このまえ最終回を迎えた『トロピカル~ジュ!プリキュア』でも気づいたことがありました。

プリキュア』3連になっちゃいますが、書きたいことを書きます。


作品のお約束で、主人公たちには毎回変身シーンがありました。

中でも一番かっこよかったのが、「あすか先輩」こと滝沢あすかのキュアフラミンゴ。プリキュアの変身はかわいらしさが基本なイメージなんですが、彼女だけは姉御肌のキャラもあってか、路線が凛々しくて勇敢。キレのある動きとか、なわとびでも再現してみたくなる姿でした。

でも、僕が感じたのはそれだけではありませんでした。

本来、使い回しのはずの変身シーンや勝利シーンの笑顔。これが、だんだんと違うものに見えてきたのです。

ちょっと思いこみが入るんですが、中盤から見はじめた僕にとって、あすかだけはプリキュアにしては大人なイメージでした。プリキュアになったエピソードを見ると、仲間を信じられずに壁を築いていて、それでも、まなつたちのピンチを無視できずに自分から変身アイテムを貸せとまで言って助けたらしい。

なので、新しい仲間の中で先輩という居場所を見つけた子 ―― なのだと思っていたのです。でも彼女にはまだ陰(かげ)がある。同じくプリキュアになったさんごやみのりが、自分の「かわいい」や「物語」を信じて自分に向きあったのと違って、あすかの向きあう相手は、自分だけでなく、生徒会長の百合子という他者でした。出会うたびににらみあう2人。しかもその理由は僕が見はじめた中盤でもまだ語られていませんでした。

どれだけかっこよく変身して笑顔になっても、それはまるで、つらい現実から一時的に解放されているだけのような、陰があるから引き立つタイプの笑顔に見えました。


 ―― 仲間なんて……、いらない。

傷ついた過去が語られたのは、それからようやく。子ども向けにふたを開けるには重いエピソードでした。お姉さん役のあすからしい過去だったのかもしれません。そして終盤、あすかはその過去を乗りこえました。そこであの笑顔が変わった。

「はためく翼! キュアフラミンゴ!」


変身も勝利も、同じシーンの使い回しのはずでした。それが、初めて迷いのない笑顔に見えたのです。恥ずかしい話ですが、それを感じたとき、泣きかけました。過去も受けいれて、今このときのためにポーズを決めるあすかは、それくらいかっこよかった。


つまりはストーリーだったのです。

なわとびで、そんなものが見せられるのか? ―― 跳びながら何か話せというのではありません。跳ぶ姿から想像されるもの。以前 Twitter の[過去話]で出した 188 アトリエのカーブ で、三村大輔さんの演技の連続技に、積み重ねてきたものを感じた話を書きました。イメージはあの感情に近いです。

感じるストーリーなんて人それぞれ。上のあすかの話だって、気にしなかった人は今日も同じ変身シーンだねと流し見だったでしょう。だれもがストーリーを想像してかっこいいと思えるような跳びかたは、難しいとは思います。

それでも、自然に演じているような場面は生まれます。あすかのような立ち位置がいい例で、みんなを先導する頼もしい先輩でありつつ、まなつやローラに振り回される苦労人でもある彼女が、いっしょに笑顔でプリキュアに変身して、ビクトリー!もキメてくれる。プリキュアという幼さもあるキャラに、同じ目線で立ってくれることがかっこいい ―― そんなストーリーが後ろに見えるのです。

もしなわとびが「子ども」の象徴だとしたら、学校で児童にまじってなわとびしてる僕は、だれかにストーリーを想像してもらえるでしょうか。自分からじゃなく、だれかがその人の中で、想像のあいまにかっこよさを感じてくれる瞬間があれば最高だなって思います。

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585 デフォルメとディテール(2) でふれましたが、あすかの変身は描画を短くしてキレを出してるそうですね。変身シーンは見ていて気恥ずかしいこともありますが、そういう演出を生みだすためにスタッフが向きあった時間を想像すると、また別のかっこよさが見えてきます。

今週のお題「自分に贈りたいもの」 …… プレゼントというより、エールっぽく。