とびまるの「なわとびのこと」

なわとびのことを書いたり描いたりするブログ。

764 大好きの形

■ 強さと弱さを、レッツ・ラ・まぜまぜ

今回は「多様性のこと」。

キラキラ☆プリキュアアラモード』を見ました。

今年のシリーズに合わせて特別配信をしていたので、この機に、と思って……。そんなに評判が高くないシリーズと目にすることもあったんですが、そんなことなく1か月半見続けられました。


思ったのは、自分は否定されない物語が好きなんだな、ということです。

スイーツがモチーフでありつつ、キーワードは「大好き」。好きな気持ちのありかたをいろんな形で描いていて、このブログでなわとびをテーマに向きあいかたの違いを書いてきたことと、つながるものがありました。

「好きの形」という言葉をたまに使っています。

だいたい「人それぞれ」「僕はこうです」という締めに流れつくんですけど、『プリアラ』もそこが同じ。みんな抱えているものがあって、たとえば将来の夢は必ずしもスイーツに関わる生きかたではありません。この時期(2017年前後)のプリキュアシリーズは多様性をテーマにしていたそうで、モチーフはスイーツでも、テーマは好きの形なのかな ―― と見ていくうちに思っていました。


そんな「形」の1つは、こだわりだったと思います。

僕にはそれが、熱くも冷たくも刺さりました。主人公の1人は、ひまりという背が小さくて物静かな女の子。スイーツと科学が大好きで、幼いころ、友だちに熱く語ったら、

―― なあ、その話、いるか?


お皿から滑り落ちたプリンのように消せない記憶となって、彼女の中に残りました。このシーン、僕には、こだわりの強さへの何気ないカウンターに見えました。

たぶん、想像がつきますよね。僕もこんなふうに、自分の「好き」を言葉という「形」にして届けすぎてしまうからです。配信時のコメント欄でも、「ひまりんみたいに思ったことをばーっとしゃべっちゃう」「そんな自分が苦手」と書いてる人がちらほらいました。

好きとこだわりって、紙一重なんですよね。

ひまりが小さくてかわいらしい見た目なのは、子どもっぽいオブラートに包んで、こだわりをやんわりと見せるためだったのかもしれません。それでもやっぱり、特性は特性として見えるものです。そんな彼女が、主人公のいちかに素直に受けいれてもらえて、涙を浮かべながら友だちになっていく。

自分の中で育てきれなかった気持ちをすこしずつ形にしていきながら、ひまりはあるエピソードで、言葉で追いこまれた仲間をかばいます。かばうといっても、その子のいいところを必死で言葉にして並べて重ねるのが、そのときのひまりにできたことでした。

その姿がね、見ていて苦しかった。この子にとって ―― いや、同じ特性を自分の中に感じている人にとって、言葉を重ねるのって、特技のときもあれば、逆にコンプレックスの象徴なことも多いと思うんです。それでも、友だちのためにひまりは涙をにじませて言葉をふりしぼった。しゃべりすぎるのがダメだと思っていた自分に、言葉を「手段」として選ばせた。そんなシーンに見えてしまって、泣き崩れそうになったのを覚えています。

この作品で、プリキュアは変身するときに2つの言葉を口にします。ひまりは、「知性」、そして「勇気」。上のシーンだって、自分の中に勇気を作っていくエピソードなんでしょうけど、彼女自身が認められなかったこだわりを、力にしていくための勇気でもあったと思うのです。


否定されない物語。

最初にこう書いたのは、今回の敵はわりとメンタルを否定してくるタイプが多かったからです。主人公それぞれ個性が違っていて、それを1つ1つつぶしてこようとする。今思うと、多様性というテーマの敵でもありますね。均一化とか単一性を強要するより、否定したほうがダメージが高い。なかなか残酷なデザインだと思います。

もちろん、それで砕かれることはありません。プリキュアらしく「負けない」。シリーズを何本も見てきて、最近おもしろいと思ってきたのは、相手の主張や手段に真っ向から議論をしてないところです。今回なら、好きを否定されたらより大きな「大好き」を見せつけて、必ずしも敵を否定しないんですね。変身して浄化といういつものパターンも、議論とは違うところで決着しているように見える。

なわとびを始めてから、小さな世界で大好きを届けている人たちがたくさんいるのを知りました。僕はそこまで気持ちがのぼっていかなくて、自分のなわとび熱なんてこんなものかな、と否定に近い気分でいたことがあります。でも今は違います。大好きとまでは言えなくても、自分なりに好きの形を描きながら毎週跳んでいます。

「もともと、オレの心の中にあった闇のせいさ。それはこいつも一緒なんだろ」

「おまえもスイーツ食えるように、早く起きてこいよ」


終盤のこのせりふ、一瞬、過去の自分にかけられた言葉のようにも聞こえて胸がつまりました。自分にとって、なわとびがスイーツのように、素直に「楽しい」「好き」と言えるものでよかった。


「大好きはいっぱいあるから、一つの大好きでぶつかっても別の大好きでつながることもできる」


僕はもう、なわとびでつながりと言えるものはあまりないんですけど、「別の大好き」で自分を見捨てずに跳んでいられるのは心地よい時間だな、と思えました。これからも、そんな時間を好きでいられる人でありたいと思います。

そういうメッセージを、明るく、ときに負けずに、伝えてくれたこの作品が大好きです。

イラスト:キャラの集合絵。中央でいちかが縄をくるくるリリース。そばにボウルを持ったペコリンと長老様。支えるようにビブリーが座っている。左側にあおいとひまり。あおいは歌うように、ひまりはノートを抱えながら語るように、グリップを口に近づけている。右上に手を伸ばして歌劇風のポーズをとるあきらさんと、しなやかに手を下に伸ばすゆかりさん。2人のグリップの先がふれあっている。左上にリオとシエル。グリップを重ねて、縄がらせんのように上がっている。

大好きの形、できあがり!

 
―― ジャンプとスイングを! レッツ・ラ・まぜまぜ!

こんなふうに心で叫べたらいいな……。今回も、素敵なシリーズでした。ごちそうさまでした。