今回も「擬音のこと」。
このへんからマンガ限定に近いですが……。
その3。描き文字そのものを工夫できないか?
『ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章』などを描いている藤原カムイというかたが、以前、『精霊の守り人』という小説をマンガ化しました。そのとき、おもしろい音の描き方をしています。
槍使いの用心棒が主人公なので武器を持った戦闘シーンがあるんですが、よくある「カンッ」「キンッ」という描き文字が、武器の動きに合わせて動いているんです。フェイントを入れて動きを変えるときは、まさに「ひゅんっ」を途中で曲げながら描くような……。
前回のイラストで、TJをしている男の子にあてた「ひゅばっ」という音を曲げながら描いてみたのは、これを意識していました。リリースなんかは、この「曲げながら描く」で表現できそうな気がします(笑)。
音を作るのが難しいなら、表現に工夫を加えたらどうかという話ですね。
もともと文字は、ものの姿かたちを崩して作られたものが多いです。「文字もまた絵」として工夫するマンガ家も多いと思います。鋭い文字やヒビの入った文字で音を表すとか、音を漢字にしてしまうとか(「牙ッ」「怨っ」)。
その4。どの瞬間をとらえた音なのか?
特にレベル2が入る多回旋がそうです。1つの技の中で、音が変化してるんですよね。TJなら、サイドスイング、トード、O、1つずつ音は違います。たとえば「ヒュンヒュオヒュンッ」のように、トードの部分だけすこしだけゆったり感のある音をつけられます。
ただ、イラストの場合、TJを1コマで描こうとしたらどう描くでしょうか。だいたいトードの瞬間になると思います。写真でもほとんどこれ。一番いい瞬間です。前回のTJのイラストも描かれているのはSトードの瞬間で、音も「ひゅばっ」です。最後のOは音の中に入ってません。
「ヒュンヒュオヒュンッ」という音も「あり」ではあるんですが、そこから絵にしようとすると、全部跳んだところなので、跳び終わりに近いフォームになりそうです。一枚絵だとTJの見せ場をはずしているというか……。
フィニッシュを表すなら、思いきって「――ュンッ!」というのもありでしょうね。
つまり、どの瞬間をとらえたかによって、当てられる音も変わるのです。
単純な3重とび、4重とびだと、むしろ音をすべて描いたほうがいいでしょう。「ヒュン」がいくつ描かれているかで「何重とびかわかる」からです。これは実際に「縄が何回回っているか聞く」こともあるので、多回旋の表現としては王道とも言えます。
いったいどこで役に立つ話なのか……。
一通り書いてみて、ふと浮かんだオリジナルはこれです。
普通の持ち方じゃ「ひ」にならないんですよ。