今回は「Oのこと」。
Oは日本語でなんと言うのでしょう?
前回のタイトルは「交差の前にOがある」でした。
交差に入る前に、O(オープン)状態をちゃんと作ると交差を作りやすいという話でしたが、なわとび(というより単縄)を知らない人には、「Oって何?」だったのではないでしょうか。
文字の形から、普通に腕を開いた回しかたのイメージはあったかもしれません。それでも、「交差」は普通に日本語なのに、なぜもう一方は「O」なのか。
日本語でそれっぽい表記がないからです。
―― と言いつつ、実はあります。「順」回旋。以前の小学校の学習指導要領にもこの表記で載っていたそうで、
昭和53年までの学習指導要領での「あやとび」という技は、平成元年の学習指導要領で、「順と交差跳び」、一回旋一跳躍の両足跳びは、「順跳び」と改名されている。
―― 齋藤仁『なわ跳び練習百科』(叢文社)
現在の学習指導要領だと、「前や後ろの連続両足跳び」のような表記になっていて、PDFページ内で検索しても、「順」は使われていないっぽい。ただ、一時期でも国が示した表記だけに、書籍や論文、授業案では「順とび」とか「順回旋」はよく見ます。過去になわとび団体が使っていたこともあって、アシックスのとびなわに付録でついてる検定表もその表記だったような……。
熟語で言うと、「順当」あたりが、普通の回しかたという意味で近いニュアンスかな、と個人的には思います。
ただ、やっぱりなじみがないのも事実。
前回のタイトルが「交差の前に順がある」だと、交差に入るための「順番」の話だと思われてしまいそう。(あながち間違いではないのですが)
「交差」って、手や縄の状態を表してもいますし、「交差とび」の略称としても通じます。「順」も状態を表す言葉ではあるんですが、状態も略称も「前」「後ろ」で普通に通じてきたので、あまり見かけないうちにそのまま埋(うず)もれてしまった言葉なのかもしれません。
検索で出た論文だと、注釈に「短縄跳びの技の表記は,必ずしも統一されているわけではない」ともありました。
単縄だと、競技ルールとして統一されている部分はあります。何より、単縄をやってると、O(オープン)とかC(クロス)のような省略記号を何度も目にするので、すっかりアルファベット・カタカナ表記に慣れっこ。それを思うと、「順」は歴史ある古語のような響きすらあります……。
あえて「順」以外の日本語にすると――?
「開く」とか「通常」とか、ムリに言葉を乗せてみました感があって、なじまない。あやとびなんかも、「交差と普通の前回しを交互に……」と説明する中で「普通」が修飾語になってるくらいでしょうか。
交差の対義語を検索すると「平行」が出てきます。でも、なわとびの場合、腕の動作・状態としてはやっぱり「開く」で、O(オープン)ってしっくりくる表記なのです。
別にOでも、前回のタイトルの語感としては悪くなくて、そういう意味では案外「円」でも似合うのかもしれませんね。