とびまるの「なわとびのこと」

なわとびのことを書いたり描いたりするブログ。

681 ヒーロー

■ 誰かを救う、そんな瞬間に

今回は「ヒーローのこと」。

あのころ夢見たヒーローは、どこにいるのでしょう。

くさいせりふで始めてすみません。「ヒーロー」がテーマの新作『ひろがるスカイ!プリキュア』(以下『ひろプリ』)を見て、なわとびに結びつけて書きたくなりました。

その前に言いたいのは、切りかわり早すぎだということです。

1年見つづけた前作の余韻がまだ残ってるのに、次の週にはもう新しいシリーズ……。1週間では短すぎる、せめて ―― ということで、前作『デリシャスパーティ♡プリキュア』(以下『デパプリ』)でも感じていたヒーロー像をつなげながら、書きたいと思います。


僕が最初単縄に見たのは、まさにヒーローでした。

3重とびは当たり前、足の下に手を入れて回し、空中で回したグリップをキャッチ、縄1本でポーズまで決める。それもたくさんの人の前で。すごいなあと思いつつ、運動が苦手でもなわとびだけはなんとか好きでいられた子どものころを思いだして、もしかしたらとグリップを握ったのが10年前の始まりでした。

思い描いていた、縄とともに舞う姿は思ったより遠いものでした。目の色を変えてヒーローをめざしていたわけではありませんが、クセや感覚に苦しむことが今でも多くて、人並みでも跳べれば近づける ―― と思っていた姿にすらたどりつけなかったのが、ヒーローです。

そんな中、去年に続いて見てみた『ひろプリ』の第1話。

ヒーローになる夢を描いた大切なメモ帳を破り捨てられても、赤ん坊のお姫さま・エルちゃんを助けるために立ちあがる主人公のソラ。そこに、エルちゃんが涙を浮かべて、舌足らずな声で叫ぶ「ぷいきゅあー!」の呼び声。

なぜか、ここで涙が出たんですよね。「ああ、ヒーローは、求める人がいてこそヒーローなんだ」って……。自分だけで覚醒するんじゃなくて、助けを求める声を受け止めたように初めて起こる変身。ヒーローになりたい女の子とヒーローを求めたお姫さまの、声にならない光が重なって、結びついたように見えました。

 ―― ヒーローは1人でならなくてもいいんだ。

なわとびでひそかにヒーロー像を夢見ていたころ、僕は、無理して自分だけで光をまとおうとしていたのかもしれません。エルちゃんが叫んだとき、自分では届かなかったものが生まれると気づいて、涙が浮かんだのかなと思ってます。


きっと、いろんなヒーローがいます。

前作『デパプリ』で、男の子ヒーローだったブラックペッパー(愛称ブラペ)。プリキュア以上の力はないし、そこまで大きな見せ場もない。だって、そうですよね。女の子ヒーローが主役の物語の中で、彼はおそらく主役にはなれない。そのイメージが序盤からあったせいか、実際にヒーローになりきれないブラペの姿に、静かにシンパシーを感じてました。


コメントでやりとりしてる curez さんがこの感想記事で、プリキュアには「友情・努力」はあっても「勝利」は合わない、だって「負けない心」がプリキュアが重ねてきたメッセージだからと書かれてます。(ズレてたらすみません)

ブラペも、敵を倒すよりも、ずっと大切な人の笑顔を「守る」ために戦っていました。作品的にも、敵を倒す(というか浄化する)のはプリキュアの役目だから、彼は少年マンガ的に敵を倒すヒーローには、始めからなれません。線引きされた力を持たされた中で、自分にできることは何かと迷いながら、守りたい、助けたいという気持ちはずっと変わらなかった。

ヒーローを支えるのもヒーロー。彼がそう明言したわけではないんですが、そんな立ち位置こそ彼の役割だったと思うのです。主役、ヒーローはプリキュアたち(ブラペにとっては特にプレシャス)がいつも前に立っている。でも、常に主役ではないけれど、主役を支えて、ときに閃光のようにまぶしく燃える存在。それもヒーローなんだとブラペは教えてくれた気がします。


普通の人がたどりつきそうな着地ですね。

始めからわかってるんです。そこまで特別になれない人は、いっときでいいから …… と、ささやかな夢に落としどころを見つける。僕も同じです。それでも、

きっと変身願望 みんなこっそりあるでしょ?

  ―― 『トロピカル~ジュ!プリキュア』後期EDテーマ「あこがれ Go My Way!!」より


やっぱりそういう瞬間はあるんですよ。自分の意志で足を踏みこんだとき、心と体は何かを演じている。公園で、学校で、なわとびを手に地面から離れるとき、人目があろうとなかろうと、どこかにヒーローでいたい自分がいる。救う相手がいるとしたら、それはヒーローになりたかった自分なのかもしれません。

なわとびに悪はいません。あるとすれば、できないという沈んだ気持ち。今の時期、僕は小学校という子どもに寄りそえる場所に立てています。子どもの沈んだ気持ち、あるいは未知への期待。そこに手を差しのべるのがヒーローなら、そのときだけは、

「ヒーローの出番です!」

 

イラスト:ブラペがハットに手を当てながら放ったグリップを、キュアスカイが受けとって、体に巻きつけながら変身時の決めポーズ。右手を腰に、右足を曲げて、左手を伸ばして突きだしたグリップが円光を放つ。まわりに羽根のイメージ。後ろでキュアプレシャスがしゃがんで頬杖をつきながら笑顔になっている。

バトンタッチ …… したように見えるかな?

キュアスカイの決めポーズは、なわとびのラップと相性がいいな、なんて思ってヒーローのバトンタッチにしてみました。