■ なわとびイラストに何を見るか?
今回は「イラストのこと」。
なわとびのイラストを見ていて、思うことがあります。
―― 跳んでるとき、縄は上? 下?
「回しながら跳んでる絵なら、それで伝わるでしょう」と言われてしまえばそれまでですが、技術的に見たらどうでしょうか。
まず、縄が上にある場合。
個人的に気になるのはこちらのパターンです。これで本当に跳べるんでしょうか? どんな技を跳んでいるかにもよりますけど、おそらく普通の前とびだと思います。それも、まだ慣れてない前とび。
タイミングが合ってないように見えるからです。
普通の前とびでジャンプ中に縄が上にあるということは、跳びあがりながら縄を上に回しています。動きとしてイメージすると、まだ慣れてない子どもが、跳ぶのも回すのも同じタイミングでやってしまっている姿が浮かびませんか?
慣れてくると、前とびは縄が頭上を越えるまで跳びはじめません。さらに慣れれば、足の前まで来たら軽く跳んで済むくらいです。跳びながら回すと、縄を先に回しきらないと間にあいません。どちらかというと、縄が上にあるのは、2重とびや3重とびの途中じゃないかなと思います。
普通の前とびの見本にすると、ちょっと違和感がある絵に見えますね。
ただし、1回旋2跳躍(ぴょんぴょんとび)をコマ送りしてみると、ちょうど2跳躍目で縄が上を回ってます。そういう意味では、慣れてない前とびらしい瞬間なのかもしれません……。
では、縄が下にある場合は?
こちらのほうが自然に見えます。縄を跳びこすときには、当然ジャンプしているからです。言葉で見ても、「縄」を「跳ぶ」からなわとび ―― のイラスト。王道というか、疑う余地なしのポーズです。
ただ、足の下へ回すことにこだわりすぎると危険です。なわとびのイメージイラストくらいなら大丈夫ですけど、これが技の見本になると、切りとられた瞬間(=足の下を回すシーン)に向けて力を入れてしまう恐れがあります。
もともと、どんな技も、足の下を通すのが目的みたいなところがありますからね。それがイラストで余計にふくれあがらないか? というのも、今回気になったところです。
とはいえ、イラストの目的はそこじゃないんですよね。
伝えたいのは、あくまでもなわとびしている姿。縄が下なら、いかにも跳んでる感じが出てますし、縄が上だとしても、大きく広がってる開放感があります。技術的にああだこうだ言っても、イラストが求められているイメージは別物です。
見かたを変えれば、縄を上に回すのは、足の下まで縄をふにゃらせずに回すための準備でもあります。実際、跳ぼうと構えながら縄を上に回しているイラストもあって、跳んでなくても跳ぶイメージを呼び起こされておもしろい。
なわとびのイラストを何百枚も描いてきましたが、どれだけ実感に近づけているか……。描きながら、なわとびのポーズになってはまた描いて、を繰り返しています。