■ またたく人の風景
今回は「多様性のこと」。
たまにテーマにしてるプリキュアとなわとび話です。よろしければお付き合いください。
2019年のシリーズです。去年の途中から、1年くらいかけてゆっくり見てました。「多様性」がテーマなことだけ知ってましたが、ちょうどいい距離感に、ほっとできる作品だったな、と思います。
宇宙に飛びだすし、もちろん変身して戦いもします。ただ、ずっと遠い風景として流れているのは、いろんなありかたを認めつつ、それ以上無理に踏みこむことのない、付かず離れず並んで座っているような雰囲気でした。そこが良かった。
なわとびを始めて10年以上たって、なわとびの世界もそんな風景だといいなと思ってます。なわとびに限った話でもないと思いますが、そういう自然な風景につく題名の1つが、「多様性」なのでしょう。
ささやかな自由がそこにはあるんですよね。
主人公のひかるが、まわりとすこし距離を置いている子だと気づいたのはだいぶあとでした。口癖の「キラやば~っ☆」を連発して、好きなことにどんどん顔を近づけていくイメージが強くて、僕にはひかると周囲の関係がよく見えていませんでした。
昨年の『デリシャスパーティ♡プリキュア』だと、食レポ好きならんちゃんが、わきでる気持ちを変と言われた過去に向きあうお話がありました。公園でなわとびする姿に重ねて、シリーズ感想で書いたことがあります。
見かたを変えると、ひかるは浮きぎみですけどそこをバカにされることはありません。逆に、誰かの珍しいところを見つけて応援して助けるけれど、深くは関わらない。まるで衛星のように、一定の距離まで来たら自由に離れるんです。
束縛しないと言ってもいい。
僕も、子どものころからずっと、人とはちょっと距離を置く性格でした。今も変わりません。だからでしょうか、そんなひかるの姿にあまり違和感がなくて、物語の中盤で「1人で星座や宇宙のことを考えるのが好きだったんだ」と仲間に囲まれながら話すのを聞いて、やっとシルエットが見えた気がしました。
でも、気づかないほど自然に見えていたことに、このうえなく穏やかに「誰かを認める」まなざしが自分の中にあったように感じるのです。認めると言う必要すらない、当たり前にそこにいる風景。
「多様性って、こういうことでいいんじゃないかな」と思いました。
ただ、いつも自然でいられるとはかぎりません。
『スタプリ』では、「イマジネーション」という言葉が繰り返し出てきます。想像して思い描くことで夢が広がるよ! と子どもに伝えるのが一番大きいんでしょうけど、相手のことを想像しなければわかりあえないし、つらい気持ちが残ってしまう ―― と何度も、それこそ叫ぶこともありながら、伝えていました。
印象的だったのが、34話のサボローとの出会いです。言葉を持たない相手に、なんとか気持ちを伝えようとするえれなの姿に見えたのは、サボローの気持ちをなんとか想像しようという思いでした。これは異星人でなくても同じです。誰でも、言葉が通じない場面になったことはあるはずです。
相手が自分とは違う存在だと突きつけられたとき、自分はどうしたらいいのか?
どうしたらよかったのか? とかすかな痛みとともに思いかえす人もいるでしょう。僕もそうでした。翻訳機能があるこの物語で、言葉すら交(か)わせないこのお話は ―― それこそ「想像して」考えれば、本来の異星人との出会いです。想像しきれなかった過去を見せられるようで、印象深い回でした。
長くてすみません、もう1つだけ。
プリキュアといえば変身なんですが、今回は、もともと変身できる子がプリキュアになります。その子も、周囲とは距離を置く子です。ひかると違うのは、変身できることが孤立するきっかけでした。深くは語られませんでしたが、僕には、その子にとって変身が必ずしも受けいれられる力ではないように見えていました。
そんな子が、誰かを助けたいと思って、プリキュアという変身を選んで受けいれる。
自分が望む変身を見つけたような変身シーンの始まりが胸を打つんですよね。自分という多様性との葛藤。いろんな自分を認めて解き放ったように見えました。
何より、プリキュアという変身そのものが人を救えるのだと、プリキュアの存在を改めて輝かせる演出にも映ります。
自分の中の果てにあった変身。そう考えたとき、なわとびで演技をして、日常の自分から変身できることを知ったのって、大きかったと思います。僕はもう、こんなふうに普通の自分から「跳び」だす手段を探さないかもしれません。それでも、子どものころに想像した、変身できる自分は、なわとびのおかげで今ここにいます。
なわとびのことはあまり語りませんでしたね。
なわとびにはいろんな技があるし、いろんな形でなわとびしている人がいます。そこにはきっと、ここまで書いたような風景があります。たとえば、公園で大人が1人でなわとびする姿は目につきますが、好きなんだろうな、楽しんでるんだろうな、と軽く想像しながらいろんな人が通りすぎているのなら、それが自然な距離感なんだろうと思います。
付かず離れず。縄の回しかたに似ています。なわとびはいいも悪いもひっくるめて好きで、1人で跳んであれこれ書いて、描いている自分は、誰かとつながって星座を描けるような立場ではありません。『魔法つかいプリキュア!』の挿入歌を借りるなら、夕空のはじっこで小さくまたたく星くらいのものでしょう。
きっと、他にもそんな星が散りばめられて、なわとびの風景ができている。そうだったらいいな、と思います。
なわとび技のスターフリーズを、『スタプリ』の5人バージョンで。
最後に、curezさん、おすすめありがとうございました。素敵な時間をいただきました。