■ 手を動かせば鋭く変わる縄
今回は「回しかたのこと」。
前回の流れでタイトルはシャープ。
半分は向きあいかたの話だったんですが、なわとびの技術だと、グリップをフラット(水平)にそろえたほうが回しやすそうと書きました。角度が違うと、縄がブレるからです。
ただ、それだけだと追いつかない瞬間があります。特に、速く回そうとするときは、フラットな形を作るだけでは縄に勢いをつけられません。
手が動いていないからです。
形にとらわれた結果なんでしょうか。フラットにするのは大切でも、手が動かなければグリップも動きませんし、その先にある縄に力が伝わるわけがないのです。手を(縄を)動かしつつ軸は保つ。その軸があるからフラットに見える。これが、動いていないようで動いている姿なのだと思います。
今の表現、上手な人の姿に重なりますよね。小さく振れば縄が風を切るように回る、そんな姿をやってみようとしてうまくいかないパターンもまた同じ展開です。動きが小さく見えても、縄の先をとらえて回すには手もとの確かな動きが必要なのです。
あまり手が動いていない回しかたは、縄の軌道もどこかフラットです。
これは、「変化がない」というニュアンスでのフラット。Twitter の[過去話]で前フリとして 374 正円と楕円 を出したんですけど(2023.12.20)、これを書いた2018年前後は、けっこう「正円が理想」だと思ってました。そりゃあ全方向にきれいに回せればいいんでしょうけど、タイルを敷きつめるようにまんべんなく回せるものなんでしょうか。
今は、いわゆる「上下に振る」のが理想です。頭上に縄を回すのがおろそかになっていたのに気づいたころから、徐々に変わっていきました。縄の軌道が、上下に鋭く形をつけていったのです。
その鋭さに当てた言葉が「シャープ」です。
正円から、上下に変化する楕円。手もとであまりフラットな回しかたをするのではなく、上下にシャープを作る。
この意識を持つことが、手もとを動かす意識につながります。凝(こ)り固まったカプセルのような意識を、内側から変化させること。あまり手が動いていない状態は、寒さや力みになぞらえて前々回に書きました。
一応、ここから3連でつなげた話です。シーズンになって子どもを見ていると、やっぱり手が動かずに縄がついてこない子は多いです。力みだったり、ジャンプで手に意識が行かなくなってるようだったり……。僕もきっとそういう時期を長く過ごしました。手を動かして縄を上下に動かそうと意識できるようになったのが、ここ数年の(やっと気づいた)向上なのだと思います。
ちなみに、元は音楽記号からのタイトルです。
♭(フラット)は半音「下がる」のにどうしてフラット(平ら)なのでしょう。むしろ半音を戻す「ナチュラル」では? と思って調べてみると、元は音をやわらかくするイメージから来ているような話が見られます。逆に、♯(シャープ)は音をとがらせていたらしい。
そんな印象も縄の姿に合うかな、と思ってのお話でした。