■ どすん、ぴょんぴょん、それから?
今回は「ぴょんぴょんとびのこと」。
ウサギ年は過ぎましたが……。
(なぜウサギネタなのかは余談なので最後に回します)
なわとびシーズンになりました。学校では初めて1年生の子と知りあう季節です。それまでの僕は、「学校でたまに見かける人」でしかありません。今年(去年)も冬休み前の1週間で、何人か寄ってきてくれました。
まだタイミングを合わすだけで精一杯の子も多いです。いわゆる「ぴょんぴょんとび」で、1回回すまでに2回ジャンプする子。1回旋2跳躍とも言います。
この跳びかた、基本的に前とびの子ばかりなんですよね。これをスムーズにジャンプ1回で跳びつづける、1回旋1跳躍に行くまで修行する技が前とびみたいなもの。
……ではあるんですが、やっぱり背伸びして他の跳びかたをする子もいます。出会ったときは前のぴょんぴょんとびが10回続くかどうかだった子が、次の日、後ろとびに目覚めていました。
どすん。
最初はこれでした。後ろとびだと、縄がいつ回ってくるかわからないので、縄が通るまで空中にいようとするからだと思ってます。脚を曲げっぱなしで、沈みこむような着地。タイミングがわからずに引っかかるよりは、なんとか跳べるように空中で体を維持できているぶん、いいと思います。
もうすこし跳びやすいように、後ろの地面に縄が当たるように回してみて、と教えました。これ、昔、児童館で、ビニールの床に縄が当たる音で後ろとびのタイミングがわかると言っている子がいて知りました。後ろの床を指して、ここに当てるとわかりやすいと……。
この子も、それですこし跳びやすくなったのか、どっすんとび(?)でも2~3回続くようになりました。そして、さらにその次の日のことです。
ぴょんぴょん。
―― ぴょんぴょんとびになってる!
蛹(さなぎ)からの羽化を見てるような気分でした。この季節の夕暮れのように移り変わりが早い。
ただ、そこから冬休みまで、ずっとぴょんぴょんとびでした。前回しがぴょんぴょんだから仕方ない ―― というより、ぴょんぴょん状態で回数を追うのが大好きみたいで、もう、休み時間のあいだ、ずっとやってる。他の学年の子と跳んでると、「○回できた!」と定期報告してくれるので、見せてもらううちにとうとう10回。
最初はですね、このアドバイスをしようと思ってたんです。
あのころに付け加えるなら、足だけじゃなく手、つまり回すほうも意識して縄を速めていくと、ぴょんぴょん2回跳んでる余裕はなくなるから1跳躍でのペースに持ちこめるかなとも思ってます。
でも、うれしそうに跳んでるのを見ると、これって「教えたい」側のわがままなのだと気づきます。求められて「教える」側なら、こちらもぐぐっと近づいてアイデアを出しますが、自分のいる環境はそうではないな、と。
どすん、ぴょんぴょん、それから?
あの子がぴょんぴょんの次を跳ぶのは、あの子自身の気持ちが新しい方角へ舳先(へさき)を向けるときでしょう。上の話で紹介したふっくんの話でも、跳べてる人をマネするうちに1回旋1跳躍になっていくことも多いそうです。
実は昨日、知ってる人のお子さんがぴょんぴょんとびから抜けだした話を聞きました。動画その他見ながら冬休みにずっと跳んでたそうです。そんな偶然にも後押しされて、本来技術話のつもりだった今回、こんな展開に切りかえたのでした。
で、最初に書いた余談なんですが、年末の干支(えと)ネタはいつも、「話は今年、絵は来年の干支」だったんです。2022年ならトラの話とウサギのイラスト。ところが前々回は話も絵も龍で、話をウサギにするのをすっかり忘れてました。ぴょんぴょんとびのことを書いているうちに気づいて、ちょっと埋め合わせしてみた …… というお話でした。