■ 縄を短くさせるときの責任
今回は「縄の長さのこと」。
「跳べた……!?」
自分でも跳べたことが信じられないような顔。今年も何人か、そんな瞬間に出会えました。
2重とびや3重とび1回、あるいはその連続。なかなか超えられなかった1回の壁を超えるまでに伝えたアドバイスはいろいろあります。ただ、効果てきめんというか、最後のひと押しがきれいに決まったのは、縄を短くしたときだった印象があります。
縄を短くするときは、結び目を作るのを教えています。
グリップに近いところでひと結び。それでも長ければ2つ、3つと増やしてもかまいません。グリップの中に縄を押しこむ子もいますが、縄が回りづらくなりますし、教えられる時間も限られている中では時間もかかります。
単縄を始めた10年以上前から、いろんな人がやってました。初めて見たのは生山ヒジキさんのショーでした。後ろ4重や5重の挑戦タイムがあって、そのときはいつも縄を結んでから挑戦されていたんですよね。
回しづらい(+顔に当たるのが怖い)後ろ回しで、よくあれ以上短くするなあと思ったものですが、慣れてきた今ならその効果がわかります。回しきれないときは「縄が余る」感覚があって、そこを文字どおり縮めるのが結び目作戦です。僕も4重とびをするときは結び目を作って、終わったらほどいて別の技をやります。1本の縄で技に合わせて長さを調節できるのが便利です。
ただ、そのタイミングが重要です。
「回しきれていないな」と気づいてからでないと、短くなった縄に対応できません。縄をとらえて回しやすくなる一方で、足にも当たりやすくなるからです。結び目1つぶん、「跳ぶ環境」が変わってるわけで、長さが変わった違和感だけですぐに元に戻す子もいました。
いくらアドバイスでも、相手の跳ぶ環境を変えてしまう以上、伝えるタイミングをはかるのが教える側の責任と言えます。
結び目作戦は、万能の秘薬ではありません。短くなった縄に技術や気持ちがついてきて、初めて成功につながります。特に、足への当たりやすさをどうフォローしてあげるかで効果も変わってくるでしょう。
僕も4重とびでそこに悩みました。足に当たるし、頭にも当たる。手を動かして、下にも上にも縄が通過するようになるまで、苦戦した覚えがあります。縄は短くしたものの、技術が足りなかったんですね。
「縄が短くなったから足の下までちゃんと回してね」
基本はこれだと思います。できる子は、体のほうを縮めて対応してしまうかもしれません。クラブで、結び目を作ったら一発で3重とびに初成功した子は、「わかってる」子だなあと思いました。
そう考えると、跳べるか跳べないかの境界線上にある人に向いている気がします。わりとぎりぎりの線をあと1歩、というときに、帯(おび)を締めるように結び目を作ることが、覚悟と成功につながるのでしょう。