■ 予備回旋で事前のベストを作る
今回は「フォームのこと」。
最近気にかけているポイントです。
前回しでも交差でも、まずは続けて跳んでみます。このとき、腕をどれくらい開くか、背すじから腰はどの角度がいいか、合わせていきます。
何に「合わせる」かというと、回しやすいフォーム。
交差の話を書くとよく話に出すんですが、フォームって崩れやすいんです。それが縄の軌道の崩れにもつながる。回しやすいフォームからはずれてしまった、と言えます。
それを防ぐために、回しやすいフォームを先に確認して覚えておいて、いざ技を跳ぼうとするときにそのフォームへ持っていく。単純ながら、力の入りやすい多回旋にはこれがききます。
僕が確かめているポイントを書いてみます。
(前とびを始めて、次の部分を確かめながら続けます)
・腕はすこし伸ばして、縄が張るように。
・縄が上に回るときに、手も合わせて上げる。
・グリップの先から縄が回るのを意識する。
・背中をそらさず、わずかにかがめる。
・ただし腰・おしりは突きださない。
・首はかがめない。頭は真上を意識。
3~4回跳ぶあいだに、これくらいを確かめて、いったん縄を止めます。腕や体はそのまま。その一時停止状態が、自分にとって回しやすいフォームです。
ジャンプ(脚側)はいったん横に置いてます。確かめたいのは跳んでからの空中の状態なので、複数の情報で混乱するのを避ける意味もあって、回す手と支える体にしぼってます。
それでかなり跳べるの? と聞かれると、あくまでも本人の実力しだいでしょう。重要なのは、そのときのベストに近づけるかどうかだと思います。
跳んだときのギャップをうめるやりかたですね。
勢いその他でバランス(フォーム)が崩れて、「うまく回せる形とのギャップ」が生まれます。自分もそうなんですけど、縄の軌道・形が崩れてしまう理由の一部は、常にここに行きつくんじゃないかと思ってます。
以前は、多回旋になれば力の入りぐあいも変わるので、こういう確かめは理想論っぽくて効果が薄い気がしていました。でも、予備回旋でできたことが実際の技でできないなら、そこには落ち度があるはずなのです。そういう意味では、以前の考えは基礎をないがしろにした発想でしょう。
もちろん、回しやすいフォームを維持すれば、5重とび、6重とびまでどんどん跳べるかというと、そうでもありません。ただ、2重とびや3重とびで、はたしてフォームも安定して回せているか? ここを再確認すると、自分の崩れかたが具体的に見えてくるのではないでしょうか。
これは、ある程度技術がついた人向けかもしれません。
「回しやすい」と感じるには、それだけの技術は必要だからです。でも、上で書いたように、「そのときのベスト」でも十分だと思います。
たとえば、2重とびで腕を伸ばす子。
これが最高峰の技術とは言えませんし、本当は縄の長さ調節のほうが重要かもしれません。それでも、その子にとって「回しやすい、そのときのベスト」なのは、このフォームです。何度も回してみて、縄が張って一番回せるのがその形だと気づいているのです。
本番前の確かめを、予備回旋として先にちょっとやってみる。
自分なりに回せる形ができて、「いけるかも……!」と思える。
一番の効果は、自分に期待できる、その瞬間かもしれませんね。