今回も「回し方のこと」。
もう1つ、回すために「回さない」技術があります。
縄が頭を越えたあたりで回すのをやめると、縄に勢いをつける練習になります。具体的には、縄がピンと張る瞬間を感じること。
なわとび初心者は、「縄の勢いを追いかける」クセがあると思います。縄を回しながら、どこまでも腕を動かしてしまうのです。
これには2つ問題があって、1つは、いつまでも縄に合わせて手を動かしっぱなしで、縄自体の勢いをつけられないことです。もう1つは、手を動かすのに集中しすぎて、跳ぶタイミングを見失ってしまう、という問題があります。
遠心力の記事(086 縄を回すための「見えない重り」)でも書いたことですが、「縄を張る」と遠心力で縄が引っぱられて、放っておいてもある程度は勢いがつきます。縄を張るには、手元の動きを止めて、縄が勢いだけで向こうへ行くようにする必要があります。
縄がピンと張られる瞬間から離れるにしたがって、縄の張りは緩くなって、ふにゃふにゃ状態に近づきます。張りの弱い縄は、勢いをつけるのが難しいです。これはピンと張る前でも、ピンと張ったあとでも同じです。
もちろん、「前」ならピンと張る状態に近づきながら縄が回っていますし、「あと」でもピンと張られた状態がすこしだけ保たれたまま縄が回ります。まだ、勢いをつける余地はあります。
それでもまずは、ピンと張る状態を感じるのが近道だと思います。その感覚は、言ってみれば「成功経験」のようなもので、今後、同じ状態で回したいと思ったときの基準になります。
そこで使うのが、「回さない」という技術です。
回さないと言っても、回さずに縄が止まってしまったら意味がありません(笑)。短い時間です。上のイラストで、縄がピンと張る位置を示していますが、縄がそこに回るすこし前に、縄をちょっとだけ回さない時間を作ります。
背中から頭の上へ縄が回る勢いにまかせて、縄がピンと張るところまで自然に持っていくわけです。そして、縄がピンと張ったところで回すと、回しやすくなります。
前跳びのアドバイスで、よく「顔の斜め上に来たらジャンプして」というのを見ます。これも、顔の斜め上あたりが縄がピンと張る位置で、そこから回しながらジャンプすると、跳び越しやすいタイミングなのでしょうね。縄は下に、体は上に動きますが、縄がピンと張る瞬間というのは、その「下げながら上げる」感覚をつかみやすいのだと思います。
2重跳びも3重跳びも、跳んでから次の1回を回すときにすこしだけ「間」をとります。これも、縄がピンと張る瞬間を待っている状態です。「ため」と言ってもいいでしょう。このとき、ほとんど手は動いていなくて、縄は、勢いだけで、ピンと張る瞬間まで回っています。やっぱり、回していないのです。
誰かに教えた結果ではありませんが、これも1つのコツだと思います。
僕も小さな子に教えた経験は少なくて、上で書いたことは、ほとんど、自分の感覚とイメージが元になっています。
でも、今後、小さな子に教える機会があるなら、あらかじめこういうことを考えておかないといけません。その場で跳び方を見てアドバイスできるのは、「どうしたら良くなるか」を知っているからです。考えなしに、教えることなんてできません。
自分の感じていることが、教える子の上達につながればいいのですが……。